カンヌに行って来ました。いつかは映画人として行きたいなとは思っていましたが、まさか急にこんな感じで行くことになるとは。自分でも驚いています。
今年のカンヌ映画祭は、奇しくも『TOKYO!』と『トウキョウソナタ』と題名に東京がつく2本が正式出品されていたものの、例年に比べて日本からの関係者は少なかったと聞きます。そんななか、小笠原くんのレポートにもあるように、公式上映の夜、タキシードを着たわれわれは、花火が打ち上げられた街を、華やかなメイン会場に向かった訳ですが、個人的にはどうも場違いのようにも感じられ、レッドカーペットの近くよりも裏通りにあるカフェでこそやっと落ち着けたものです。日本語を話すマダムに案内されたテーブルで赤ワインを飲みながら、しみじみとカンヌの夜を実感した次第です。
そもそも『TOKYO!』は、パリに住む日本人プロデューサー2人の企画によって生まれ、3人の外国人監督と、ほとんどが日本人のキャスト、スタッフによって撮影されました。その出来上がりは、日本映画でもなく、フランス映画、韓国映画でもなく、まさしく不思議なコスモポリタンな映画となっています。
公式上映で、日本での試写室では見られない笑いなど、カンヌならではの違った反応があったのは驚きでした。また、ピクニックの名前が小さいながらスクリーンに映った時も、ちょっと嬉しく誇らしく感じました。
映画祭初日の朝に、メイン会場の前に着くと、もう大勢の観光客が写真撮影をしていて、我々も当然のようにそれから写真をどれだけ撮ったか、デジタルカメラなのでもの凄い枚数になったと思います。リュミエールで、ドビュッシーで、マーケットのブースで、近くのホテルのロビーで、トップレスのいたビーチで。まるで修学旅行での中学生のようでした。まあそれも、18年前に会社を創立したメンバーが揃っていたこと、今回はある意味で記念旅行でもありましたから、どこに行っても写真を撮っている、ほんとおのぼりさん集団でした。
現在、カンヌはもっとも権威のある、人気のある映画祭だと思います。しかし、今年はハリウッドからプロモーションのためにきたような映画が目立っていましたし、マーケットにもホラー映画なんかが多くて意外な感じもしました。一方、コンペティションは政治色の強いセレクションだったような気がします。『TOKYO!』は<ある視点部門>での上映でしたが、他にも<監督週間>や<批評家週間>などの部門があり、とにかくカンヌではもの凄い数の映画が上映されているのが、現地にいって実感としてわかったことです。
春藤忠温